こんにちは、つみれです。
さて、『史記』という中国の歴史書をご存知でしょうか。
歴史書ときくと、もうそれだけでジンマシンがあらわれたり、呼吸困難になったりする人もいるかもしれません。
しかし、まあちょっと待ってください。
『史記』はただの歴史書ではないのです。
読んでおもしろい歴史書、それが『史記』なのです!
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目次
司馬遷『史記』
『史記』って誰が書いたの?
『史記』は、司馬遷という人が書いたと言われる歴史書です。
中国の伝説の時代から、前漢の武帝という人の治める時代(司馬遷もこの時代の人)までが描かれています。
文字数にしてなんと52万6500。フリーザの戦闘力に匹敵します。
ところで、この司馬遷という名前ですが、なんとなくとある歴史小説家を彷彿とさせるものがありますね。
そう!司馬遼太郎です。
実は、司馬遼太郎というのはペンネームなのですが、これは司馬遷に対するリスペクトから「司馬遷に遼か及ばず」という意味を込めたと言われています。
では、司馬遼太郎をしてここまで言わしめる司馬遷とはどんな人物だったのでしょうか。
そしてその著作『史記』とは一体どれほどすばらしい歴史書だったのでしょうか。
「中国の正史」のトップバッター
正史は「まさし」ではありません。「せいし」です。
勘違いしやすいので気をつけなければいけないのが、正史は必ずしも「正しい歴史」を意味しないということです。
正史とは国家によって編纂された歴史書、あるいは国家が正当であると認めた歴史書といった意味。
つまり、その国家にとって不利になるような記述はあえて省いたりぼやかしたりしてあるよ!ということです。
民間のあやしげな歴史書に比べたらはるかに信頼性は高いといえますが、史実=正史ではないということは知っておかなければなりませんね。
正史の意義は、歴史を正しく後世に伝えるということもありますが、なにより今の国家の正当性を裏付けるということにあります。
故に前王朝の正史を現王朝の歴史家が書くという構図になるのが常です。
現在、中国で正史と認められた歴史書は全部で26(二十六史)あるのですが、これら正史の記念すべきトップバッターが司馬遷の『史記』というわけです。
ちなみに、私が大好きな『三国志』は中国の正史の第四番目にあたります。
これら二十六史の質はまちまちで、中には史料的にかなり劣るものもあると言われますが、第一弾の司馬遷『史記』、それに続く第二弾の班固『漢書』は質的にトップクラスと言われています。
余談ですが、『史記』と『漢書』のどちらが優れているかを争う議論を「史漢優劣論」といいます。
歴史書の書き方
歴史書の書き方には、大きく分けて編年体と紀伝体という二種類があります。
おっと、ページを閉じるのはまだ早い。簡単な話だから最後まで聞いてくれ。な?
編年体
歴史書の書き方を考えたとき、おそらく最初に思いつくのが「編年体」だと思います。
簡単に言ってしまうと、めちゃくちゃ細かい年表というところでしょうか。
年代順に事件を書いていく歴史書の記述法、それが編年体です。
例えば中国では『春秋』という歴史書がこれにあたります。
日本でいえば『日本書紀』が編年体の歴史書として有名ですね。
ある時期、ある期間にどんな事件が起きたのかがわかりやすいというのが長所です。
一見、これ以上ない最高な書き方に見えるのですが、時系列で事件を記述するため、たとえば、
事件A→事件B→事件C→事件A→事件C
というようになり、一つの事件をまとまりとして捉えづらいという欠点を持ちます。
たしかに、事件Aについて知りたい!というとき、ページを行ったり来たりしなければなりませんね。
紀伝体
人や国など、テーマごとに事件を書いていく歴史書の記述法です。
じゃあ、どんなテーマがあるのよ?ということになりますが、
とりあえず、「本紀」「列伝」の2種類を覚えておけばまず問題ないです。
- 本紀・・・帝王の事跡を記す。
- 列伝・・・人臣の事跡を記す。『史記』では名臣以外に侠客や刺客までも含み、対象は幅広い。
本紀と列伝がメインになるから、「紀伝体」というんですね。
基本的にその特徴は、編年体の裏返し。
長所は、一つの事件や一人の人間をストーリーとして捉えやすく、物語的なおもしろさがある(ここ重要)点。
短所は、記事の重複が多くなったり、全体としての歴史の流れを意識しづらい点。
必ずしも後に発明された紀伝体のほうが優れているということはなく、それぞれに長短がありますね。
中国では、『史記』を筆頭に全ての正史が紀伝体で書かれました。
日本では、水戸光圀が編纂させた『大日本史』が紀伝体の史書としては有名でしょうか。
水戸光圀は、水戸黄門のモデルになった人です。
そして、この紀伝体という書き方は、なんと司馬遷が発明したんです!
つまり、『史記』が世界最初の紀伝体の歴史書ということ。えっ、これすごくない?
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司馬遷の人生ダイジェスト
横山光輝『史記』のトップバッター
『史記』列伝は、神話の時代から前漢武帝の時代までの人物で、特筆すべきビッグネームの事跡を描いたものです。
伝が立てられているのはまさにそうそうたるメンバーなのですが、その一番最後に『史記』を著した本人である司馬遷の伝も立てられています。
横山光輝のコミック『史記』では、この司馬遷のエピソードを一番最初に持ってくるという操作をしています。
こうすることによって、『史記』とはどういう書物なのかということをわかりやすく描いてみせたというわけですね。
歴史を書くことが親孝行への道
司馬遷の父を司馬談といいます。
司馬談は歴史書を書くという構想は持っていたのですが、ついに完成させることなくこの世を去ってしまいました。
司馬遷は父の遺志を受け継ぎ、歴史書を完成させることを人生の目標とするようになったのです。
暗雲
司馬遷は歴史書の編纂を全うさせるという夢を持ちながら、まったく別の仕事をもって漢の武帝に仕えていました。
そんな時、司馬遷の同僚である李陵が異民族の匈奴に捕まり、降伏したという報せが届くのです。
正義感の強い司馬遷はすかさず李陵を弁護します。
李陵将軍は立派な武将です。無実でございます
そちは朕を侮辱するのか!はい、投獄
えっ、うそでしょ
なんとそれが武帝の怒りにふれ、投獄されてしまいます。
なんという理不尽。武帝キレすぎ。
判決は死刑です。どう考えても狂気の沙汰です。
死刑を免れるにはすさまじい額のお金を支払うか、宮刑(去勢させられる刑罰。ヒィー)を受けるかの二つに一つ。
司馬遷はお金を払えませんでした。
死を選ぶよりは生き恥をさらしてでも歴史書を完成させる。それが司馬遷の決断です。
司馬遷は宮刑を受け、宦官(去勢された官吏)として生きることにしたのです・・・!
一心不乱に歴史を書く
司馬遷は武帝から中書令という官職に任命されます。
これは宮中の文書を取り扱う官職で、この立場も怪我の功名とばかりに最大限利用し、ひたすらに歴史書を書き続けます。
そして『史記』130巻を完成させるのです。
横山光輝『史記』
この司馬遷のエピソードを描いたあと、横山光輝の『史記』は他の列伝の人物を描き始めていくわけですが、これがわかりやすくておもしろいんです。
もともと『史記』の話がおもしろいというのに加えて、横山氏の絵がなんとも親しみやすくていいんですよね。
いろいろと横山氏の創作部分もあるようですが、それも含めて『史記』の世界を味わっていきたいですね。
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終わりに
歴史書でありながら小説的で、読んでおもしろいといわれる司馬遷『史記』。
初めて読むなら横山光輝氏のコミックがわかりやすくておすすめですので、興味があればぜひ手に取って読んでみてくださいね。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
つみれ
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