こんにちは、つみれです。
このたび、綾辻行人さんの『十角館の殺人』(講談社文庫)を読み終えました。
2016年に一度読んでいるので、今回は再読ということになります。
それまで社会派ミステリー(社会性のある題材を取り扱うミステリー)しか読んでこなかった私を本格ミステリーの沼に引きずり込んだ名作です!
名作すぎて、再読でもめちゃくちゃおもしろかったぞ!
それではさっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:十角館の殺人〈新装改訂版〉 (講談社文庫)
著者:綾辻行人
出版: (2007/10/16)
頁数:357ページ
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王道のクローズドサークル!
私が読んだ動機
ブログでクローズドサークルの記事を書いていたら読みたくなりました。ぬへへ。
こんな人におすすめ
- 本格ミステリーを読んだことがない
- クローズドサークルが好き
- 長編ミステリーのシリーズを読み始めたい
綾辻行人『十角館の殺人』は、本格ミステリーのお約束的な要素がぎっしりと詰め込まれています。
本格推理ものを読んだことがないという人にうってつけの一冊ですよ~!
内容は、外界から隔絶された島で惨劇が繰り広げられるワクワクが止まらない典型的な孤島系クローズドサークル・ミステリーとなっています。その手のミステリーが好きな人にはたまらない作品ですね。
何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品Wikipedia「クローズド・サークル」
外界との連絡手段が絶たれることも多い。サークル内にいる人物のなかに高確率で犯人がいると思われたり、捜査のプロである警察が事件に関与できない理由づけになったりなど、パズルとしてのミステリーを効果的に演出する。
冒頭にも書いた通り、私のように本作から本格ミステリーの沼にハマってしまったという話もよく聞きます。
陳腐な言い方になりますが、これを読まずに死んだらもったいないと言えるくらいの名作です。
また、本作『十角館の殺人』は、綾辻行人さんの「館シリーズ」の第一作目にあたる新本格ミステリー(これがデビュー作というのだからすごすぎる)。
これから新しい長編ミステリーシリーズに挑戦したいぜ!って人にもおすすめですよ。
あらすじ
四方を断崖絶壁に囲まれた「角島」には、中村青司(なかむらせいじ)という人物とその家族が住んでいたが、半年前に起きた凄惨な事件が原因で今は無人島となってしまった。
その角島には青屋敷という建物があったが、母屋は半年前の事件で焼け落ちており、今は離れにある奇妙な館「十角館」しか残っていない。
とある推理小説(ミステリ)研究会の学生たちが、十角館を訪れる・・・。
いいですねえ!誰が見ても非の打ち所がない完全なる死亡フラグです!
ワクワク感がマックスすぎる。
大方の予想の通り、この学生たちも凄惨な事件に巻き込まれる。
犯人は内部犯なのか?それとも外部犯なのか?半年前の事件との関係は?
一方、学生時代に推理小説研究会に所属していながらとある事件をきっかけに退部してしまった江南(かわみなみ)のもとに不審な手紙が届く。
お前たちが殺した千織は、
私の娘だった。『十角館の殺人』kindle版、位置No. 649
手紙の裏には「中村青司」と名前だけが書かれている。
江南は角島に遊びに行ったと思われる友人たちの安否を気遣いながらも、湧き起こる好奇心を抑えかね、この不審な手紙の謎を解いてやろうと思い立つ。
その過程で、とあるお寺の三男坊、島田という男と出会い、彼とともにこの謎の解決にあたっていくことに。
島と本土
本作のおもしろいところは、推理小説研究会のメンバーたちが角島で過ごす「島」編と、江南・島田コンビが情報を集め謎の解決を目指す「本土」編に分かれていて、それらが交互に繰り返されるというところです。
クローズドサークル系ミステリーの常として、サークル内とサークル外を結ぶ連絡手段がないという形になることが多いです。
ミステリーファンととしては、橋が落ちたり電話線が切られたり土砂崩れで道路がふさがれたりするとテンション上がります。
本作『十角館の殺人』も例外でなく、孤島(サークル内)と本土(サークル外)の間で一切連絡が取れないという状況を迎えます。ほらね、最高でしょ?
本土側で江南と島田がコンビを組んで一生懸命不審な手紙について調査した結果、その裏に潜むキナ臭い事情がだんだんと明らかになっていきます。
しかし、その事情を現在進行形の事件の当事者である孤島のメンバーに伝える術がありません。
かたや、孤島側で凄惨な事件が立て続けに起こり、推理小説研究会のメンバーたちが精神的に追い詰められた日々を送っているという事実を、江南や島田は知りません。
島側のメンバーも本土側のメンバーもそれぞれ重要な役割を担っていながら、最も大切な「島・本土相互の情報交換」を行うことができず、事件は犯人の思うツボ、最悪の結末に向かっていくというわけです。
つまり、島と本土の両方の物語の進展を追う特権は、読者にのみ与えられているという快感があるのです。
最高だなあ最高だ。
プレート
推理小説研究会の面々が角島での生活をして二日目の朝、最初に目を覚ましたオルツィ(キャラクターについては後で書くよ)は、十角館のテーブルの上に不審なプレートを見つけます。
うーん、王道ミステリー最高!!!
不吉にも程があるだろ、といいたくなるほど物騒な内容のプレートです。最高です。
アガサクリスティの名作『そして誰もいなくなった』では、マザーグースの子守歌『10人のインディアン』の歌詞になぞらえるようにして殺人が起きます。
そして、10体あったインディアン人形が殺人の都度減っていく・・・という不気味な演出がありました。
このように何かに見立てて殺人が起こる趣向を「見立て殺人」といいますが、本作のこのプレートは、アガサクリスティのインディアン人形のオマージュとなっています。
私、こういったオマージュ的要素が大好きなのですが、初読時にはクリスティの『そして誰もいなくなった』を読んでいなかったのでこのオマージュを味わうことができなかったのです。
だから『そして誰もいなくなった』読後の再読である今回は、やはりうれしかったですね。こういうことだったか、と。
そういう意味ではクリスティの『そして誰もいなくなった』を、本作より前に読んでおくことをおすすめします。
ともあれ、これは犯人からの推理小説研究会メンバーに対する殺人予告であると同時に、読者に対する下のような宣言でもあります。
控えめに言って最高ですね。ワクワクが止まりません。(←バカ)
こういういかにもミステリー的な小道具が、読み手を興奮させるんですよね~!
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キャラクターが最高
ミステリーにおいて大事なのは何か、といったら、やはり「謎解き」「トリック」ということになります。
が!それと同じくらいにキャラクターの魅力も大事だと思うんです!
「すぐ死んじゃうんだから、テキトーなキャラクターでいいじゃん☆」みたいなミステリーはあまり好みではありません。
素敵なキャラクターだから「死んでほしくないなあ」と読者に思わせておきながら、結局は死んでしまう。
この無念さにミステリーの醍醐味があるわけです!!
この点を踏まえて、『十角館の殺人』を振り返りますと、控えめに言って最高です。ワクワクが止まりません。(←バカ)
まず、十角館に向かう推理小説研究会のメンバーたちがすばらしくいい。
彼らは全員、あだ名で呼び合っているのですが、そのあだ名が有名な推理小説家の名前からとられているのです。
エラリイ、カー、ルルウ、ポウ、アガサ、オルツィ、ヴァンの七名。
この七名、みんなとてもいいんですよ。
メンバーにケンカを売りまくっていかにも序盤に殺されそうなカーとか、医学の知識があるポウとか、美人で自信満々のアガサとか、逆にまったく自分に自信がないオルツィとか、本当にみんないい。
なかでも気取った素人探偵といった風情のエラリイが最高すぎるんですよ。殺人事件が起きているのにトランプ遊びとか始めちゃうんだぜ。最高すぎる。
キャラが立っているっていうのはこういうことを言うんだな、と思いました。
ちなみに初読時には、私、かろうじてエラリイとポウの名前の由来になった小説家、エラリークイーン、エドガーアランポーを知っているくらいで、他は全く知らなかったんです。アガサクリスティすら知らなかった。
でも、物語は問題なく楽しめたので、古典ミステリーに詳しくないという人も心配はいりませんよ☆
そんな魅力的な彼らが、事件に巻き込まれるに伴って、時に協力し、時にいがみ合いながら、一人ずつ減っていく。
未読の方には、ぜひ彼らのキャラクターのすばらしさを味わってほしいですね!
新装改訂版がおすすめ
本作には「旧版」と「新装改訂版」があるのですが、未読の方は、ぜひ「新装改訂版」で読んでほしいです。
ネタバレになるのでここで詳しくは書きませんが、本作最大の仕掛けが「新装改訂版」では最高の形で演出されています。
どっちで読もうか迷っているという方がいましたら、「新装改訂版」がおすすめです!3回言いましたからね!
新装改訂版は表紙もかっこいいんですよ!
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終わりに
本作の初読の時の衝撃は、正直言ってすさまじいものがありました。
すさまじすぎて本作のトリックは二度と忘れられないものになってしまいましたが、再読でもかなり楽しめました。
私にとってはアガサクリスティ『そして誰もいなくなった』を読み終えてからの再読というのが楽しめた要素として大きかったのですが、やはり名作というものは何度読んでも楽しめるものなんだな、というのが正直な感想です。
上のほうでも書きましたが、本作を読まずにいるのはもったいないよ!というくらいの作品だと思います。
未読の方はぜひ読んでみてください。既読の方もこれを機会に再読などいかが?(*´з`)ノ
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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