こんにちは、つみれです。
このたび、榊林銘さんの短編集『あと十五秒で死ぬ』を読みました。
「死ぬ直前の十五秒」をテーマにした4編が収録された珍しいミステリー短編集です。
本作には下記の4編が収録されています。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:あと十五秒で死ぬ
著者:榊林銘
出版:東京創元社(2021/1/29)
頁数:314ページ
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目次
「あと十五秒で死ぬ」状況を異なる味わいで描く4つの物語!
私が読んだ動機
以前、友人から本短編集の紹介を受け、おもしろそうだったので読みました。
こんな人におすすめ
- 「世にも奇妙な物語」のノリが好き
- 珍しいテーマの短編集を読んでみたい
- 特殊設定ミステリーが読みたい
あらすじ・作品説明
背後から銃撃された薬剤師が時間の一時停止能力を獲得し、死ぬ前の十五秒で復讐を企む「十五秒」
テレビドラマが予想外の展開を迎えるたった十五秒を見逃した「俺」が、ドラマを見ていた姉のクイズに答える形で真相を追求する「このあと衝撃の結末が」
十五秒後に大きな交通事故に巻き込まれる夢を何度も繰り返し見る茉莉が、その真相に迫っていく「不眠症」
十五秒以内であれば首の着脱が可能な特殊な島で起こる殺人事件を描く「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」
「十五秒後に死ぬ」という特殊な状況設定で起こる4つの奇妙な事件を描く短編集。
「十五秒後に死ぬ状況」を描く4編
本短編集『あと十五秒で死ぬ』には、4編の短編が収録されています。
4編すべてが「十五秒後に死ぬ状況」を取り扱っていて、テーマとしてかなり珍しいミステリー短編集と言えるでしょう。
各編まったく異なる多彩な「死の直前の十五秒」で楽しませてくれ、個人的にとても満足度の高い一冊でした。
興味がある人はぜひ『あと十五秒で死ぬ』を手に取って読んでみてくださいね。
「十五秒」
『あと十五秒で死ぬ』に収録されている短編の第一編目は「十五秒」。
背後から銃撃された女性薬剤師が死神から時間の一時停止能力を授けられ、死ぬ前の十五秒で復讐を企図する物語です。
- 特殊設定ミステリーが読みたい
- 短編小説が好き
- 奇抜な復讐譚を読んでみたい
<あらすじ・作品説明>
調剤室で残業していた薬剤師の「私」は、背後から銃撃され瀕死の重傷を負う。
そのとき突如目の前に現れた二足で立つ猫の姿の死神によって、「私」は時間の一時停止能力を手に入れる。
「私」は、余命の十五秒を最大限に有効活用できる方法を考えに考え抜いて小刻みに実行に移していく。
彼女は残された十五秒でいったい何を成し遂げたのか?
本作は、死ぬ直前に死神に時間停止能力を授けられた「私」が残りの人生十五秒を最大限に有効活用してみせる特殊設定ミステリー。
「私」は、時間の一時停止能力を駆使して残りの十五秒を進めては止め、熟考と瞬間的な行動を繰り返していきます。
日常生活ではあっという間に過ぎてしまう「十五秒」という時間に、いかに自分のやりたいことを詰め込めるかという緊張感あふれる描写が最高におもしろい一編です。
▼「十五秒」の記事
「このあと衝撃の結末が」
『あと十五秒で死ぬ』に収録されている短編の第二編目は「このあと衝撃の結末が」。
円満な結末で終わりそうだったテレビドラマが予想外の展開を迎える十五秒を見逃した「俺」が、姉のヒントを頼りに何が起こったのかを推理していくお話です。
- SF要素があるミステリーが読みたい
- 作中作が登場する作品が好き
- 一捻りあるラストが好き
<あらすじ・作品説明>
テレビドラマ『クイズ時空探偵』の結末部分の十五秒を見逃した「俺」。
ハッピーエンドかと思われたそのテレビドラマは、ちょっと目を離した隙にヒロインの死という衝撃の結末を迎えていた。
その展開を目の当たりにした「俺」は驚き、姉に十五秒の間に何があったのかと問う。
すると姉がこれまでこのテレビドラマを真剣に視聴していなかった弟のため、欠落部分の謎解きに必要な過去のシーンを解説しはじめる。
「俺」は姉の解説をすべて聴いたあと、十五秒の真実を言い当てることができるのか。
席を外したたった十五秒でテレビドラマが急転直下の驚きの展開を迎えており、どうしてそうなったのかを知りたくてたまらない「俺」。
姉から重要なシーンをピックアップした解説を聞いて「ドラマで何が起きたのか」を推測していくというのは、ミステリーとしては珍しい推理劇ですね。
「俺」と姉のやり取りのおもしろさもさることながら、テレビドラマの内容も普通におもしろそうで、謎解きの一材料に過ぎない作中作の扱いがもったいないと感じてしまいます。
▼「このあと衝撃の結末が」の記事
「不眠症」
『あと十五秒で死ぬ』に収録されている短編の第三編目は「不眠症」。
十五秒後に大きな交通事故に巻き込まれる夢を何度も繰り返し見る少女・茉莉の不思議な体験を描く一編です。
- 短編小説が読みたい
- 不穏な物語を読みたい
- 何度も同じシーンがループする怖さが好き
<あらすじ・作品説明>
茉莉は母・葉の運転している車の中で目を覚ます。
運転中の葉は助手席の茉莉に何か話しかけるのだが、その直後大きな自動車事故に遭ってしまう。
茉莉が再び目を覚ますと、自動車事故は夢であったことがわかる。
その後、茉莉は何度も自動車事故の夢を見るようになる。
しかし、その夢の内容は毎回細部が微妙に異なっていた。
同じ夢を何度も繰り返し見るという、ループする怖さを描き切った一編です。
しかもまったく同じ夢というわけでなく細部が微妙に異なっているというオマケつき。
この微妙な差異が何を意味するのかが気になってついつい最後まで読んでしまいました。
▼「不眠症」の記事
「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」
『あと十五秒で死ぬ』に収録されている短編の第四編目は「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」。
十五秒以内であれば首の着脱を行うことができる人々が住む特殊な島で起こる首無し殺人事件の経過を描く特殊設定ミステリーです。
- 特殊設定ミステリーが好き
- 「バカミス(おバカなミステリー)」が好き
- 本格的な謎解きを楽しみたい
<あらすじ・作品説明>
離島・赤兎島の島民は、首が取れても十五秒間以内にくっつければ死なない特殊な体質を持っている。
その日、島は首の着脱を見世物として楽しむ首芸の秘祭「鶴首祭」で盛り上がっていた。
祭が終わり、夜が明けると祭会場の倉庫で「首なし」の焼死体が発見される。
この死体はいったい誰のものなのか。
首が取れても死なない島の人々が首無し殺人事件に巻き込まれ、何が起こったのか謎解いていく特殊設定ミステリー。
条件付きで他人との首交換が可能という前代未聞の設定が読者をワクワクさせてくれます。
短編集のなかではもっとも本格ミステリー感が強く、本格ファンも納得のおもしろさです。
登場人物たちはいたってマジメなのに、シュールでトリッキーな展開が続く本作ならではの味わいが魅力的でした。
▼「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」の記事
終わりに
本短編集は「死の前の十五秒」という共通したテーマを扱うミステリー作品を集めたものです。
連作短編ではないため各編が完全に独立していますが、「死の前の十五秒」という共通テーマがまったく異なる味付けでそれぞれ4編に生かされていてめちゃくちゃおもしろかったですね。
個人的なお気に入りは、4編目の「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」。
これ、最高におもしろかったです!
本記事を読んで、榊林銘さんの『あと十五秒で死ぬ』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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