ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2020.11.5)

【感想】『2分間ミステリ』/ドナルド・J・ソボル:スキマ時間に謎解きを!

こんにちは、つみれです。

本を読むようになって十数年、たくさんのミステリーを読んでまいりました。

従いまして、私の謎解きパワーは計り知れないほどのレベルに達しているものと思われます。

そんな私の実力を試すかのようなミステリー短篇集を入手しましたのでさっそく読んでみました!

ドナルド・J・ソボル『2分間ミステリ』(ハヤカワ・ミステリ文庫)です。

それでは感想を書いていきます。

作品情報
書名:2分間ミステリ(ハヤカワ・ミステリ文庫)

著者:ドナルド・J・ソボル
出版:早川書房 (2003/11/1)
頁数:234ページ

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2分間でミステリーを読もう

私が読んだ動機

とある読書会の「本交換」というイベントでゲットしました。

プレゼント本として事前に用意しておいた本を、クジで決まった他の参加者と交換するというイベントです。

どんな本がもらえるのかわからないのがこういうイベントの醍醐味ですね!

※読書会とは本や読書について語り合うイベントです。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • ミステリーが読みたい
  • ショートショート(ごく短い短編小説)が好き
  • すきま時間で読書を楽しみたい

2ページ程度の短いミステリーが71個も収録されているショートショート短篇集です。

そう、つまり1問2分で楽しめるよ!という本なのです!

一つの物語を非常に短い時間で楽しむことができるので、すきま時間読書には適していますね。

ところで、ミステリーの見どころの一つはどんな謎やトリックが仕掛けられているのか?というところだと思うのですが、これらを考えるのも並大抵の苦労ではないはずですよね。

しかるに!その謎やトリックを71個も気前よく放出してしまうというのですから、なんとも贅沢な一冊ということができるでしょう。

短篇の一つ一つがクイズ形式になっていて、いわばQ&A形式の謎解き本です。

トリックの解答も物語の中で明かされるのではなく、数ページ後に「答え」が書いてあるのです。

間違って答えを見てしまうということが起こらないよう配慮されているのですね。

71問中、何問正解したぜ!という楽しみ方もおもしろいのではないでしょうか。(私もやりました)

ふふふ、私のような年季の入ったミステリー好きには朝飯前よ!楽勝楽勝!半分くらいは余裕でしょ、もしかしたら65問くらい正解しちゃうんじゃないか、ふっへっへ!と思いながら私はページをめくりました。(フラグ)

舞台は共通

71問ものクイズが用意されている本書ですが、全てがブツ切りで無関係というわけではありません。

全ての物語が同じ世界で展開されていまして、基本的にはハレジアン博士というチート級の推理能力を持つ人物が快刀乱麻を断つ推理ぶりで各事件を解決していくのです。(一部、博士以外の人物が解くものもあります)

短篇集の場合、話が切り替わるたびに登場人物や世界観を覚えなおさなくてはなりませんが、これが結構読む側にとっては負担になるんですよね。・・・あれれ?私だけ?私はそうだよ?

本作は71編が連作短篇的に繋がっているので、そういった余計なわずらいがありません。

訳者あとがきにも、連作短篇集的な楽しみ方ができると書いてありますね。

したがって、謎解きに集中して取り組めるという寸法ですよ。いいですねえ。

登場人物がいい!

登場人物や舞台が同じだということは上に書きました。

本書のおもしろいところの一つに、ゲストキャラが魅力的だというのがあります。

ハレジアン博士に相談を持ち込んだり、儲け話を持ち込んだりといった人物が登場するのですが、彼らが複数回(つまり複数の問題で)現れるわけです。

何回も登場するキャラクターは、登場するたびに同じような問題やネタを持ち込んでくるわけですから、読んでいる側の記憶にも残りやすく、果ては愛着までわいてきます。

このあたりの作りがうまいんですよね~。

何名かご紹介いたしましょう。

たれこみ屋ニック

警察に毎回ガセネタを持ち込み、あわよくば報酬金をせしめようとする人物。

いつも余計なことを口走って失敗してしまうという、はっきりいうと小物です。

でもなぜか憎めないというね・・・!

彼はいいキャラしてますよ。

名探偵を一泡吹かせたいシドニー夫人

ニューヨーク市でも屈指の資産家で、何でも思い通りにやってきた気まぐれ&わがまま夫人。

意のままにならないのはなんとハレジアン博士のみ!

とにかくハレジアン博士を罠にはめることに命をかけている。そんな女性です。とんでもない女性に目をつけられたな。

はっきりいうと困った夫人なのですが、つめが甘く、毎回失敗してしまう姿が少しかわいらしいのです。

一獲千金を狙うバーティ・ティルフォード

私一番のお気に入りキャラです(笑)

毎回、どこかから怪しげな儲け話を持ち込んできて、ハレジアン博士に「どうだ、乗らないか?」と持ち掛けるイギリス人青年です。

毎度、ハレジアン博士に儲け話の矛盾点を指摘されてしまいますが、懲りずに儲け話を仕入れてくる。

金の亡者ですね。人を疑うことを知らない純粋な夢追い人なのでしょう。

うまい話には裏があるんですな!

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難問・悪問も

どういう問題を難問・悪問というかは人によるかもしれませんね。

ただ、一個のミステリー好きとして言うならば!

用意された解答が必ずしも正しいとはいえない問題や、単に知識の有無を問う問題などは悪問と呼びたいですね。

与えられた文章のなかに論理的な矛盾があってそこに気づければ正答できる、というのが私の考える良質なミステリーで、本書の大部分はこれにあたります。

でも71問もあるのですから、読む人によって好きな問題、嫌いな問題が分かれて当然ですよね。

私が悪問だと言ってしまった単純に知識を問うような問題も、雑学本だと考えるとこれはこれでおもしろいですしね。

個人的に悪問だな~と思ったのは、下記です。一応折りたたんでおきましょう。唾棄すべきはネタバレであります。

答えが書いてあるよ!ネタバレだよ!見たい人だけクリックorタップしてね

一番納得がいかなかったのが、Q.63です。

ルーベンスの絵画を盗もうとした人物を見抜いた根拠として、「ズボンの脱ぎ方」が挙げられているのですが・・・。

右利きの人間は、ズボンを脱ぐときにはまずたいてい右足から脱ぎますが、例外はあります。でも、はくときには絶対に左足からはくものなのです。<span class="su-quote-cite">『2分間ミステリ』p.207</span>

えっ!そうかなあ?

私は右利きですが、ズボンをはく時にも右足からはきます。

今、ズボンを脱いではきなおすというのを3回やってみましたから、間違いないです!

自室でズボンを脱いでまたはくというのを3回繰り返すとなればそれはただの変態ですが、これは高尚な実験ですから。くれぐれも誤解なきように。

でも、こういうのも含めて寛大な心で楽しむのが粋というものです!なーんつってな☆

私の正答率

さて、ミステリー好きを公言してきたワタクシ。

年季の入ったミステリー好きと上の方に書きました。

65問くらい当たるかもね☆とも書きました。

 

正解は71問中、19問でした。

こ、こんなはずでは・・・。

終わりに

なるほど、こういう趣向の本もおもしろいものですね。

私も最近忘れかけていましたが、本ブログは「すきま時間」をいかに有効に使って読書をするか?というテーマがあったんです。

そういう意味では、この本はまさにうってつけ。

いやあー、すばらしい本に出会えましたね。

そして、私の謎解きセンスのひどさには閉口しました。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

つみれ

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