こんにちは、つみれです。
このたび、エドガー・アラン・ポーの短編「お前が犯人だ」を読みました。
ラトルボロ市の名士バルナバス・シャトルワージーが失踪した事件の謎を描くユーモラスなミステリー短編です。
本記事は『ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人』所収の一編「お前が犯人だ」について書いたものです。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
短編名:お前が犯人だ(『ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人』所収)
著者:エドガー・アラン・ポー
出版:KADOKAWA
頁数:25ページ
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目次
名士失踪の謎を描く喜劇的ミステリー!
私が読んだ動機
本編が収録されている『ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人』が、私が所属している文学サロン「朋来堂」の「ミステリ部」2022年4月の課題図書だったので読みました。
こんな人におすすめ
- 全体的に明るいミステリーが読みたい
- 喜劇的な物語が好き
- ラストでびっくりしたい
あらすじ・作品説明
ラトルボロ市に住む名士、バルナバス・シャトルワージーは金持ちで人望の厚い紳士だった。
しかしある日、彼は外出したきり行方不明となってしまった。
彼が乗っていった馬だけが自宅にたどり着いたが、馬自身も怪我をしており明らかに不審な状況だ。
シャトルワージー失踪事件の謎について、彼の隣人にして友人のチャールズ・グッドフェロウが調査の指揮を取りしきることになった。
全体的に明るいミステリー短編
本作「お前が犯人だ」は、エドガー・アラン・ポーが書いた数少ないミステリーのうちの一作です。
失踪事件という深刻なテーマを扱っていながら、作品全体の空気がどことなく明るいのが特徴。
暗い雰囲気が苦手な人でも楽しんで読める感じがよかったですね。
正直なところ、本作は謎解きに重点を置いた物語ではありません。
どちらかというと喜劇的・滑稽的な印象が強く、また25ページという短さも相まってかなり気楽な気分で読めちゃいますよ。
人望の厚い名士の失踪
この物語は、ラトルボロ市の名士・バルナバス・シャトルワージーが外出したきり行方不明となったところから始まります。
シャトルワージーは馬に乗って外出しましたが、その後、馬だけが自宅に戻ってきたのです。
しかも馬自身は怪我をしている上、泥塗れの状態。
そして、シャトルワージーはそのまま行方不明になってしまったのです。
シャトルワージーは市で一番の金持ちで人望も厚かったので、彼の失踪は市でもちょっとした騒ぎになりました。
シャトルワージーの隣人
シャトルワージーの隣人にチャールズ・グッドフェロウという人物がいます。
グッドフェロウはシャトルワージー宅の隣に住んで六か月ほどですが、姿を消す前のシャトルワージーとは親しく付き合っていました。
この縁でグッドフェロウはシャトルワージー失踪事件調査の指揮を取りしきることになります。
気のいいチャールズ・グッドフェロウ
このグッドフェロウという人物は大変に人がよく、周囲には「気のいいチャールズ・グッドフェロウ」などと呼ばれています。
そもそも名前の「グッドフェロウ」自体が「いい人」「善人」という意味。
事実、物語序盤から「いい人」「正直者」な人物で通っています。
ミステリー的には「いい人・善人=犯人」と相場が決まっていて、このグッドフェロウも明らかに怪しいのですが・・・(笑)
その真相はぜひ本作を読んで確かめてみてくださいね。
不肖の甥・ペニフェザー
失踪した名士バルナバス・シャトルワージーには一人の甥がいました。
彼は名をペニフェザーといい、シャトルワージーにとってはただ唯一の肉親。
しかしペニフェザーは道楽者で素行が悪く、あまり評判がよくない人物です。
莫大な財産を持つシャトルワージーと仲違いをし、その相続権について揉めていたと噂されています。
グッドフェロウとの確執
シャトルワージーと遺産を巡って争っていたペニフェザーは、隣人のグッドフェロウとも確執を抱えています。
ペニフェザーは過去にグッドフェロウを殴り倒したことがあり、それ以来微妙な関係が続いているのです。
そして今回、シャトルワージー失踪事件の調査に乗り出したグッドフェロウの方針に横から邪魔をしたのが、このペニフェザーです。
放蕩のペニフェザーとシャトルワージー、グッドフェロウの三者の間で何があったのでしょうか。
不穏な人間関係も本作の見どころです。
語り手の「私」
本作の冒頭部から、このシャトルワージー失踪事件のいきさつを読者に伝えてくれる語り手が「私」です。
非常に無色透明な人物で、ラトルボロ市で起きた事件や人間関係を客観的に語ります。
この「私」が物語のなかでどういう視点で語りを行い、どのような役割を果たすのかについて注目しながら読んでほしいです。
ラストの衝撃
上のほうで、本作「お前が犯人だ」はミステリー的な謎解きに重点を置いた作品ではないと書きました。
しかし、解決編で起こる事件の衝撃は相当のもの。
謎解き要素は薄いと言えど、ラストでしっかりと読者をびっくりさせてくれるところはさすがですね。
このラストの描写も含めて本作は「喜劇的・滑稽的」なのです。
とても味わい深い結末が待っていますので、衝撃的なラストを楽しみたい人はぜひ本作を読んでみてくださいね。
終わりに
「お前が犯人だ」は、ラトルボロ市の名士バルナバス・シャトルワージーが失踪した事件の謎を描くユーモラスなミステリー短編です。
一人の男性の失踪事件を扱っていながら全体的に明るい雰囲気で、物語の短さも相まってかなり気楽に読むことができますよ。
本記事を読んで、エドガー・アラン・ポーの「お前が犯人だ」がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ『ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人』を手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
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つみれ
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