こんにちは、つみれです。
このたび、紺野天龍さんの『シンデレラ城の殺人』を読みました。
王子殺しの嫌疑をかけられたシンデレラが無罪を証明するために謎を解いていくミステリー小説です。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:シンデレラ城の殺人
著者:紺野天龍
出版:小学館
頁数:280ページ
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目次
シンデレラが現行犯逮捕!?絶体絶命の法廷劇!
私が読んだ動機
ミステリー好きの友人からの紹介で読みました。
こんな人におすすめ
- 本格ミステリーが好き
- 法廷ミステリーが好き
- 特殊設定ミステリーが好き
- バチバチの論理バトルを楽しみたい
あらすじ・作品説明
幼いころに父を亡くし、継母・義姉とともに暮らすシンデレラ。
怪しい魔法使いに魔法をかけられ美しい装いを身にまとったシンデレラは、城で催される舞踏会に参加する。
舞踏会で王子に見初められたシンデレラだったが、ダンスの後、王子は私室で死体となって発見される。
なんとシンデレラは王子殺しの現行犯で逮まってしまう。
シンデレラは絶体絶命の法廷で三寸不爛の舌戦を繰り広げる。
キャラクターがおもしろい
本作『シンデレラ城の殺人』は、登場人物のキャラが立っていておもしろいです。
まず、シンデレラのキャラクターが秀逸。
冒頭部から、無遠慮で口の減らないシンデレラが義姉や継母を茶化しまくる展開には笑いました。
童話だとシンデレラをいじめる義姉や継母が、シンデレラに振り回される様子は少し爽快感がありましたね。
魔法使いのおじいさんを変質者扱いした挙句、お城の舞踏会にも行きたがらず、魔法使いに説得されてしぶしぶお城に向かうシンデレラ。
基本的にシンデレラが人を食ったような態度を取り続けていて、どこか無敵感があるんですよね。
このシンデレラには序盤から大いに笑わせてもらいました。
義姉二人もいい!
童話『シンデレラ』ではいいところのなかったシンデレラの義姉。
本作ではシンデレラがかなりタフな性格をしているので、義姉の嫌味にへこたれません。
それどころかシンデレラのほうが強烈な嫌味で応酬したりするので、義姉がその強烈さに対してツッコむといった有様。
こういったコミカルなやり取りが本作の醍醐味ですね。
特に二人いる義姉のうち年下のほうのライラがツッコミ役として優秀で、シンデレラの行き過ぎな発言に脊髄反射的にツッコんでいくのがおもしろいです。
このライラは絵に描いたようなツンデレキャラで、シンデレラとのやり取りも見どころです。
一方、義姉のうち年上のほうのジョハンナはかなりの巨体で食事が大好きな健啖家。悪く言えば食べることしか頭にありません。
いい意味で本家『シンデレラ』の面影がない登場人物たちが魅力の一冊です。
義姉のライラは物語上でも重要な役割を果たすのでそこも注目ポイントでしたね。
登場人物が覚えやすい
本作でよかったのはキャラクターがとても覚えやすいことです。
そもそも一つのお城の内部だけを舞台にしていて登場人物がそれほど多くありません。
それに加え、登場人物一人ひとりの個性が際立っており、物語を読み進めるなかで自然と覚えることができます。
ミステリーにおいてキャラクターを混同せず読み進められると、謎解きに集中できてとてもうれしいですね。
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絶体絶命の法廷劇
本家の『シンデレラ』は、シンデレラが城で王子に見初められ、やがて妃に迎えられるサクセスストーリーです。
しかし、本作『シンデレラ城の殺人』はそうは簡単にいきません。
城で王子に見初められるまでは本家と同じなのですが、その後なんと王子は私室で不審死を遂げてしまいます。
一転、王子の私室まで同行していたシンデレラは王子殺害の嫌疑をかけられ、容疑者として裁判にかけられてしまうわけです。
当然、身に覚えのないシンデレラは抵抗します。
シンデレラは持ち前の機知と巧みな話術(もとい、屁理屈)で裁判を乗り越えていくという展開を迎えていきます。
王子が殺害された時間帯に、王子の私室周辺で何があったのか。
複雑に絡み合う関係者のアリバイ。
複数の証人たちを巻き込んで丁々発止の法廷劇が繰り広げられていきます。
周りは敵だらけという緊迫した状況のなか、追い詰められたシンデレラは綱渡りのような緊張感のある舌戦を展開。
この法廷シーンはかなり本格的な論理バトルとなっていて、本格ミステリー好きも大満足の内容になっていますよ。
また、各関係者の証言を集めていくシーンは伏線の宝庫となっていてかなり読み応えのある一幕です。
ミステリーとファンタジーの融合
本作『シンデレラ城の殺人』は上にも書いた通り、殺人事件が起こるミステリーです。
一方、本家『シンデレラ』の設定を利用したファンタジーでもあるので、かぼちゃやネズミを馬車や御者に変身させる魔法なども登場します。
つまり、本作はミステリー要素とファンタジー要素が融合した作品なのです。
特殊設定ミステリー
ミステリーなのに魔法が登場するとなると「なんでもありの大味な謎解きになってしまうのでは」と危惧する声もあるかと思います。
しかし、この魔法の適用範囲や持続時間、術者の能力による限界などのルールがしっかりと設定されており、それ以上のことはできません。
つまり本作は、魔法や魔法使いの存在が組み込まれた「特殊設定ミステリー」です。
魔法がミステリーに組み込まれてもしっかりと「本格ミステリー」になっており、それどころかその趣向が謎のおもしろさを何倍にも増幅してくれています。
魔法のルールがきっちりと定められていて、「魔法だからなんでもできる」となっていないのがとても良かったです。
タイムリミット
本家『シンデレラ』と同様、本作のシンデレラも魔法使いに魔法をかけられて美しい姿に「変装」して城に潜り込んでいます。
その魔法は童話と同じで、夜の零時になると自動解除されてしまいます。
殺人の嫌疑がかけられている状況で、さらに変装して城に潜り込んだ罪まで重ねられてしまうと言い訳が断ちません。
なのでシンデレラは、魔法がかかっているうちに事件の謎を解き、裁判で無罪を勝ち取らなければならないのです。
タイムリミットに追い立てられるような緊張感を味わうことができますよ。
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終わりに
『シンデレラ城の殺人』は、城の舞踏会に参加したシンデレラが王子殺害の嫌疑をかけられ、裁判で論理バトルを繰り広げていく法廷ミステリーです。
童話『シンデレラ』を下敷きにしながら、童話とはまったく異なる展開を見せるのがおもしろかったですね。
本記事を読んで、紺野天龍さんの『シンデレラ城の殺人』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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