落下する緑

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.12.10)

【感想】『落下する緑』/田中啓文:ジャズマンが謎を解く日常系ミステリー!

こんにちは、つみれです。

このたび、田中啓文(ヒロフミ)さんのミステリー連作短編集『落下する緑』を読みました。

ジャズマンが謎を解くユニークさと、事件の多彩さが魅力の一冊です!

それではさっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:落下する緑 永見緋太郎の事件簿(創元推理文庫)

著者:田中啓文
出版:東京創元社(2008/7/1)
頁数:340ページ

スポンサーリンク

ジャズマンが謎解き!

ジャズマンが謎を解くミステリー連作短編集

私が読んだ動機

  • インターネットでおもしろそうな本を探していて見つけました。
  • kindle unlimited の対象作品(2020年10月現在)だったので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 人が死なないミステリーが読みたい
  • 天才的な探偵役の活躍を楽しみたい
  • ジャズや音楽が好き

あらすじ・作品説明

音楽・芸術をテーマにした事件・謎を扱った短編を7編収録した連作短編集。

 

トランペット奏者の唐島(カラシマ)英治(エイジ)は、ジャズバンド「唐島英治クインテット」のバンドマスターで、メンバーのテナーサックス奏者年の永見(ナガミ)緋太郎(ヒタロウ)とは年齢こそ離れているが、公私ともにとても仲が良い。

 

永見はサックス演奏にかけては天才的な才能の持ち主だが、音楽以外のこととなると無頓着で、世間の常識にも疎い。

 

しかし、その永見が、事件に直面すると、持ち前の洞察力と「空気の読めなさ」を発揮して、謎を鮮やかに解決していく。

メインキャラが良い

鞄とサックス

本作の物語中で、メインで活躍する唐島英治と永見緋太郎がわかりやすいキャラでとてもいいです。

ミステリーの王道をしっかり押さえたわかりやすい配役なので、読む側も身構えることなく自然に読み進めることができますよ。

唐島英治

唐島英治は常識人かつ一般的な感覚の持ち主で、登場人物や事件の状況などを読者に寄り添ってわかりやすく説明してくれるキャラクターです。

ミステリー的にはワトソン役ですね。

ワトソン役は基本的に謎を前にオロオロするのが仕事みたいなものですが(暴論)、この唐島はトランペット奏者としては一流の腕前を持っていて、名前も結構知られているという設定がまたいいんですよ!

永見緋太郎

永見緋太郎は、空気が読めず奇人変人の類ですが、優れた洞察力で物事の本質をつかむ謎解き担当で、ミステリー的な位置づけはホームズ役です。

弱齢ながらテナーサックス奏者としても超一流の力量を持っていて、基本的に音楽以外に興味を示さないという徹底して偏ったキャラクターです。いかにもホームズ的なキャラですね。

永見のはっちゃけっぷりを楽しむのも本短編集の楽しみの一つです!

それにしても、緋太郎って名前めちゃくちゃかっこいいな・・・!

「人が死なない」文科系ミステリー

絵筆

本短編集は「人が死なない」日常系ミステリーを集めた連作短編集です。

また、主要な人物がジャズマンであることもあって、楽器や音楽が関係する事件が多いです。

物語中にもジャズ絡みのウンチクが多いのですが、特段ジャズに詳しくなくても楽しめる作りになっていますよ。

ジャズ以外にも、絵画や小説を題材にした下記のような文化的な謎を扱っています。

  • 「展覧会で展示されていた絵画が逆さまになっていたのはなぜ」
  • 「著名作家の死後に発見された未発表原稿は本当にその作家自身が書いたものか」

おもしろそうでしょ?

いずれも殺人事件を扱っていないので安心感がありますが、ただの「日常系」ミステリーではなく、「ジャズ」という個性的なワンポイントが入っているため、読み心地は独特です。

物語にもジャズ由来のユニークさがあってオンリーワンの魅力を放っていますよ。

多彩な7編

7色の絵

表題作の「落下する緑」の他に6編、合計7編が収録されています。

タイトルはすべて「落下する緑」のように「~する色の種類」という形になっていて統一感がありますね。

物語としては、人の心の醜い部分や復讐譚などを描くダーク系のものから、心温まる人情系のもの、恋愛系などもカバーしていて、隙のない短編集となっています。

多彩な謎を幅広く楽しむことができ、7編全部がおもしろいですよ。

基本的にはコテコテの本格ミステリーではなく、推理を楽しむタイプではありません。

あくまでも物語を楽しむことが主体のミステリーですが、ロジックもそこそこ楽しめるよ、といった軽い感じです。

7編のどこから読んでも問題なく楽しめますので、気楽に手に取っていただきたい一冊です。

収録された7編すべておもしろかったですが、特に私がおもしろいと思ったお気に入りの2編を紹介します!

「虚言するピンク」と「砕けちる褐色」ですね!

スポンサーリンク

虚言するピンク

日本の心を理解することに燃える元フルート奏者で現尺八奏者のデイヴ・スプリングが荒れに荒れている、という冒頭からおもしろい。

デイヴは尺八の流派染田流に入門するもなかなかうまくいかず、そのあたりの苦悩をうまく描き切っています。

デイヴ・スプリングとその師匠染田研一郎の関係がとてもよくて、読後はホッと温かい気持ちになる人情ものです。

砕けちる褐色

「一緒にセッションすることで犯人を探しだす」という「マジかよ!?」的なストーリー展開が秀逸でした。

謎解き要素は薄めですが、性格診断的な推理で犯人を絞り込んでいくのが最高におもしろいです。

ゲストキャラとして登場する片桐芳彦というスーパーわがままなベース奏者の無茶苦茶っぷりもかなり良かったです。

勧善懲悪的な物語になっていて、読後の痛快さ・スッキリ感がとてもよかったです。

ジャズ・音楽に詳しくなくてもOK!

サックスと楽譜

音楽をメインテーマに扱っている本作ですが、特にジャズとか音楽に詳しくなくても楽しめます。

私は、トランペットとクラリネットの違いが咄嗟に判断できないほどの音楽無知野郎ですが、それでも本作を十分に楽しむことができました。

音楽的な要素はあくまで作品の味付けにすぎず、ミステリー作品としてのメインの謎解き部分にそういった音楽知識は不要です。

音楽のことなんてわからないよ!という場合でも安心して楽しむことができますよ。

田中啓文の「大きなお世話」的参考レコード

本短編集には“田中啓文の「大きなお世話」的参考レコード”という、物語部分とは全く関係のない、作者田中啓文さんの割とガッツリめのジャズうんちく語りが、一編終わるごとに差し挟まれます。

いわゆるライナーノーツ的なジャズ解説文なのですが、本編とは無関係なので、物語をまとめて楽しみたい場合には、読み飛ばしたりあとでまとめて読んだりしても良いかと思います。

ですが、このジャズ語り、田中啓文さんご自身もテナーサックス奏者ということもあって語りの熱量が凄まじく、一読の価値ありです。

もうジャズに対する熱意が「これでもか!」というくらい伝わってきます!(笑)

個人的には、本編の7編すべてを読み終えてから、「大きなお世話」的参考レコードをまとめて読むのがいいかなと思いました。

 

※電子書籍ストアebookjapanへ移動します

 

終わりに

『落下する緑』は、ジャズの世界で起こる謎(例外もある)をジャズマンが解いていくというユニークさと、肩ひじ張らずに気軽に読めるお手軽さが魅力の連作短編集でした。

音楽関係の小説や、軽めのミステリーを読みたい場合にうってつけの一冊ですので、興味があればぜひ手に取ってみてくださいね。

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

 

 

スポンサーリンク

『クジラアタマの王様』【感想】『クジラアタマの王様』/伊坂幸太郎:小説なのにマンガが!?前のページ

【感想】『ウサギの天使が呼んでいる』/青柳碧人:ガラクタ収集家が謎解き!次のページウサギの天使が呼んでいる

980円で電子書籍が読み放題!?

Kindle Unlimited をご存じですか

本を読むときにおすすめなのが、Kindle Unlimited の30日無料体験。

Kindle Unlimited は、月額980円で対象の電子書籍が読み放題となるサービスです。

最初の30日間が無料です。

実際に使ってみて合わないと思ったら、30日以内に解約すれば一切お金はかかりません。

 

いつでも無料で解約できます

 

関連記事

  1. 日本の黒い霧・上巻
  2. まほり

    ミステリー、サスペンス

    【感想】『まほり』/高田大介:骨太な民俗学ミステリー!まほりの意味とは?

    こんにちは、つみれです。このたび、高田大介(タカダダイスケ)さんの…

  3. 信長島の惨劇

    ミステリー、サスペンス

    【感想】『信長島の惨劇』/田中啓文:戦国版「そして誰もいなくなった」!

    こんにちは、つみれです。このたび、田中啓文(タナカヒロフミ)さんの…

  4. 『明智恭介 最初でも最後でもない事件』
  5. ミステリー、サスペンス

    火曜サスペンス劇場のトラウマと東野圭吾

    こんにちは、つみれです。私の両親はそろって読書家で、父は歴史もの、…

  6. 万能鑑定士Qの事件簿 I・II

スポンサーリンク

最近の記事

  1. 密室黄金時代の殺人
  2. むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。
  3. 猿六とぶんぶく交換犯罪
  4. 真相・猿蟹合戦
  5. わらしべ多重殺人

カレンダー

2025年4月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  
  1. 新しい星

    ヒューマンドラマ

    【感想】『新しい星』/彩瀬まる:再会した学生時代の仲間との穏やかな交流を描く!
  2. 星落ちて、なお

    歴史

    【感想】『星落ちて、なお』/澤田瞳子:天才絵師を父に持つ娘の苦悩を描く!
  3. 黄金虫

    ミステリー、サスペンス

    【感想】「黄金虫」/エドガー・アラン・ポー:世界初の暗号解読ミステリー!
  4. 老虎残夢

    ミステリー、サスペンス

    【感想】『老虎残夢』/桃野雑派:特殊能力を持つ武術の達人たちが活躍する特殊設定ミ…
  5. ミステリー、サスペンス

    【感想】『暗色コメディ』/連城三紀彦:伊坂幸太郎が復刊を熱望!
PAGE TOP