ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2019.01.25)

【感想】奇抜な館が舞台の理系ミステリー!『眼球堂の殺人』/周木律

こんにちは、つみれです。

相変わらずクローズドサークルもの(外界との往来が断たれ孤立するミステリー)にハマっています。

クローズドサークルといっても舞台はいろいろありますが、なんといっても「館もの」が私は一番好きですね。

旧家のお屋敷や怪しげな洋館で繰り広げられる数々の惨劇。いやー、興奮しますねえ!

綾辻行人『十角館の殺人』を読んだときは、おもしろすぎて思わず震えました。

さて今回感想を書いていくのは、怪しげな館を舞台に起こる殺人劇を描く周木律(シュウキリツ)『眼球堂の殺人』。

放浪の数学者を主人公に据えた理系ミステリーで、ロジカルな要素がふんだんに盛り込まれた長編です。

私はとんでもない深読みをしてしまい、予想を盛大に外してしまいましたが、おもしろかったです。

※ネタバレ感想は折りたたんでありますので、未読の場合は開かないようご注意ください。

作品情報
書名:眼球堂の殺人 (講談社文庫)

著者:周木律
出版:講談社 (2016/9/15)
頁数:576ページ

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まだ読んでいない方へ

私が読んだ動機

クローズドサークルものが読みたくて、インターネットで検索して見つけました。

こんな人におすすめ

チェックポイント

クローズドサークルものが好き

理系ミステリーを読みたい

電波系のキャラクターが好き

『眼球堂の殺人』はミステリー作家周木律のデビュー作です。

この周木律というペンネームは化学用語「周期律」(意味はよくわからない)をもとにしたとのことで、いかにも理系ミステリー作家といった感じですね。

初めて読む作家さんでしたが、印象としては綾辻行人の「館シリーズ」に森博嗣の理系要素を掛け合わせたようなイメージでしょうか

登場人物も主人公含め基本的には変人だらけ!

私は理系的な会話は苦手なのでよくわからない箇所は斜め読みをしてしまいましたが、肝心のトリックはかなり楽しめました。

万人におすすめはできませんが、ハマる人はハマるような若干クセのある独特の味わいが魅力です。

変人だらけのキャラクター

世界的な建築学者である驫木煬(トドロキヨウ)が、彼の新居「眼球堂」に主人公を含む各界の天才たちを招いたところ、次々と凄惨な事件が起こるというのが基本的な筋書きとなります。

この天才たちというのが物理学者から芸術家まで様々いるわけですが、いわゆる普通の人たちではなく、どこか変人じみています。まさに天才となんとかは紙一重。電波系なキャラクターも複数います。

彼らのやり取りをどこまで楽しめるか、あるいはどこまで彼らに感情移入できるかというのが、物語を楽しめるかどうかの一つのカギといっていいでしょう。

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眼球堂の俯瞰図、見取り図がおもしろい!

登場人物が変人じみているだけでなく、眼球堂という邸宅自体も非常に奇妙なつくりをしていて、良くも悪くもミステリーとして変化球といった印象です。

序盤でこの眼球堂の俯瞰図、見取り図が掲載されているのですが、これがもう見るからにトリックが仕込まれていそうで、見ているだけでもおもしろい代物となっています。

作者である周木律氏は大学で建築を専攻していたそうで、あとがきには設計図や配線図などの図面に魅力を感じるといった趣旨のことが書いてあります。

文系の私からすると信じがたいほどのことですが、きっとこのあたりの作者の嗜好が物語に色濃く影響しているのでしょう。

ただはっきり言いますが、私は眼球堂に住みたいとは全く思いません。だって暮らしづらそうなんだもん

殺人トリックが見事

人が死ぬミステリーですから、当然どうやって殺害したのか、というのが見どころの一つになってきます。

ミステリーでは、人を殺すのに、ナイフや拳銃、はたまた毒など、実にいろいろな方法が使用されます。

ところがこの小説の人の殺し方はちょっと違うんです!

なかなか類をみない殺し方で、ほほーっ、これはすごい!と思いました。

なんか最悪なことを書いていますが、ミステリーってそういうものですよね…?

【ネタバレ感想】すでに読了した方へ

危険!ネタバレあり!

冒頭でも触れましたが、私はこのミステリーの謎を解くにあたってものすごい深読みをしてしまい、盛大に予想をはずしました。

ネタバレになりますが、その経緯を書いてみようかと思います。茶番に近い内容です。

ネタバレ成分を多く含みます!

今後読む予定の方は絶対に見ちゃダメ!おもしろさが激減します。

ネタバレあり!読了済の人だけクリックorタップしてね

・壮大な読み違い

この小説には陸奥藍子というキャラクターがワトソン役として登場するのですが、彼女、なんとなく怪しいです。

どこが怪しいかというと、

真実――藍子は、この眼球堂において己の目的を達成することだけしか考えていない『眼球堂の殺人』p.96

真実――十和田は卑怯な人間じゃない『眼球堂の殺人』p.215

真実――その「人の心」がよく解らないのは事実だったからだ『眼球堂の殺人』p.238

真実――少なくとも藍子は、十和田がいつも彼女の期待するとおりに動いてくれると、信じている『眼球堂の殺人』p.395

藍子は、真実――口の端に、心からの笑みを浮かべた『眼球堂の殺人』p.422

御覧の通り、「真実」の文言と、藍子の心情の吐露がセットになった箇所がしつこいほどに頻出します。

そして、普段はやや道化役のワトソンといった位置づけの彼女が、このシーンでだけはやけに頭脳明晰で腹に一物ありそうな表情をのぞかせます。

これはどう見ても怪しいでしょうが!

ここから私の盛大かつ壮大な読み違いが炸裂します。笑うがいいさ!

これは、「しんじつ」ではなく「マミ」という女性の名で、藍子はマミに心の中で話しかけているのだ。(勘違い)

マミは過去になんらかの事件に巻き込まれ死亡している。(勘違い)

マミの友人であった藍子がその仇をとるために、事件に関係していた天才たちの殺害をもくろむ、というストーリーに違いあるまい!(勘違い)

 

茶番は続く・・・!

 

途中、建築学者驫木に対するインタビューの描写が差し挟まれる箇所がある。(p.265)

そして、このインタビュアの名前が「網野亜美」。

ここで私はピーンときた。いや、ピーンときてしまった

ははぁ、なるほど、亜美は真実の姉妹か。名前が似ているからな!驫木も真実の死に一枚噛んでいるというわけだ。つまり、犯人は藍子と亜美。このトリック、解けた!(←バカ)

この時点で私は興奮していて、真実の「実」の字と亜美の「美」の字が違うことにすら気づいていない。

トリックであればこの字は同じにするはずなのだ。書いていて恥ずかしくなるほどバカである。

もうやめよう。恥ずかしくて死にそうである。マミって誰だよ

このままいくと、私が眼球堂の最後の被害者になりかねない。

 

結局、「真実」の文言に注目するという着眼こそはよかったものの、他の謎解きは壊滅的にはずしまくった。惨たる有様といっていいです。

殊に上に偉そうに書いた謎解きの経緯については、罪のレベルがあまりに高すぎる。つみれの罪である。

・お気に入りフレーズ

さて、いくつかお気に入りフレーズを紹介して、終わりにしましょうね。

確かに――最前線にあるものは、最前線であるがゆえに容易な理解を拒むということが、往々にしてある『眼球堂の殺人』p.111

天才が天才を語る物語だからこそ生まれた名言です。

先駆者はいつの時代でも理解されないものです。

「実績」や「成果」というわかりやすい形になって初めて理解されうるのでしょう。翻れば、成果が出なくても諦めずに継続することの価値を説いている言葉でもありますね。

それにしても、理解されなかった天才が、後の世で再評価を受けるというのは当人にしてみたらどんな気持ちなのでしょうか。

 

誰かの見解に異議を唱えようとするときには、必ず自分の見解を持たねばならない。

自分の立場を明らかにしない反対など、無責任なわがままと同じだ『眼球堂の殺人』p.214

本作では、なんとなく作者がこの考え方に強い気持ちを込めていることが随所に感じられます。

無責任な批判にさらされ、つらい気持ちを味わったことがあるのかもしれませんね。私も経験があります。

批判することで相手よりも優位に立てると思い込んでいるような人間を相手にするのは時間の無駄ですね。

世の中、そういう人間を相手にすればするほど、こちらが損をするようになっています。

ベターな対処法は、華麗にスルーをすることでしょうか。

 

理想的な解とは、最初の一撃からしてエレガントに始まり、それゆえ、続く証明も華麗に進んでいくものなのです『眼球堂の殺人』p.352

なんとなくうまくいきそうなときは最初の手ごたえからして違うなんてこと、よくありますよね。

うーむ、いいフレーズです…!

おわりに

いろいろな意味で心に残る作品となりました(笑)

続編もたくさん出ているようですね。トリック自体はとてもおもしろかったので、そのうちに読んでみようかと思います。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

つみれ

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