こんにちは、つみれです。
このたび、万城目学さんの『ヒトコブラクダ層ぜっと』を読みました。
特殊能力を持つ三つ子が謎の女性に弱みを握られ、彼女の指示に従って異国の砂漠で冒険を繰り広げていくSFファンタジー小説です。
また、本作は第12回山田風太郎賞(2021年)の候補作です!
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:ヒトコブラクダ層ぜっと
著者:万城目学
出版:幻冬舎(2021/6/23)
頁数:(上)448ページ、(下)492ページ
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目次
万城目ワールド全開のメソポタミア冒険譚!
私が読んだ動機
第12回山田風太郎賞候補作にノミネートされ、興味が湧いたので読みました。
こんな人におすすめ
- 古代メソポタミア文明に興味がある
- 特殊能力を持つキャラクターが好き
- 「万城目ワールド」を堪能したい
- 大ボリュームの物語を読みたい
- 予測不能な物語が好き
あらすじ・作品説明
貴金属泥棒で大金を手に入れた三つ子の梵天・梵地・梵人。
彼らには不思議な能力があり、その能力を使えば貴金属泥棒など朝飯前だ。
ある日、そんな三兄弟の前にライオンを連れた謎の女が現れる。
女に弱みを握られていた三名は、彼女の要求に従い自衛隊に入隊、気づけば異国の砂漠に派遣されていた。
不本意ながらも向かわされた砂漠の地では、彼らの想像を絶する冒険が待ち受けていた。
大ボリュームの摩訶不思議冒険譚
本作『ヒトコブラクダ層ぜっと』は万城目学さんによる大ボリュームの摩訶不思議な冒険譚です。
そのボリューム、なんと上下巻あわせて900ページ超え。
特殊能力を持つ三つ子、梵天・梵地・梵人の三名が不思議な運命に翻弄されていくエンタメに振り切った一冊です。
意味不明なタイトル
本作の『ヒトコブラクダ層ぜっと』というタイトル、意味がわからないですよね。
万城目学作品はタイトルが意味不明なものが多いんです。
例えば『鴨川ホルモー』『偉大なる、しゅららぼん』などは気持ちいいほど意味不明。
本作もそれらに引けを取らないほど意味不明です。(褒めてます)
「ヒトコブラクダ層」ってなんだ?
「ぜっと」ってなんだ?
これらの謎が解けるのは中盤・終盤ですが、意味がわかると「なるほど、そういうことだったのか!」とスッキリすること必至ですよ。
キャラクターが良い!
本作『ヒトコブラクダ層ぜっと』には、梵天・梵地・梵人の主人公格のキャラクターに加え、インパクト大の魅力的なキャラが数名登場します。
このキャラたちがいい味出しているんです。
梵天・梵地・梵人
本作の主人公は、梵天・梵地・梵人の三兄弟です。
- 梵天:長男
- 梵地:次男
- 梵人:三男
兄弟の名前がすげぇ・・・。
三人は三つ子ですが、性格も体格もバラバラ。
梵天は幼い頃に亡くした両親に代わって二人の弟の学費を稼ぐために工務店で働く頼りになる長男です。
恐竜が好きでいつか化石を発掘してやろうという夢もあります。
次男の梵地は三兄弟のなかで最も頭がよく、語学に巧みです。
また、考古学に強い関心を持ち、学問の道を目指しています。
一方、末弟の梵人は持ち前の運動神経を武器に、スポーツ特待生として競技に励んでいました。
しかし、あるとき大怪我をしてしまい、アスリートとしての道を閉ざされてしまいます。
以上のように、三つ子でありながら才能も境遇もバラバラのこの三名が本作の主人公です。
梵天は恐竜の化石発掘、梵地はメソポタミア文明の調査という夢がありますが、梵人は夢をすでに失ってしまっています。
三人の「夢に対する想い」を味わうのも本作の醍醐味の一つですね。
そして、なんと彼ら三名はそれぞれ異なった特殊能力を持っているんです。
三つ子の特殊能力
本作の主人公、三つ子の梵天・梵地・梵人にはそれぞれ別々の特殊能力があります。
これが実に個性豊かで、なおかつ個々の性格にもマッチしていておもしろいんですよ。
- 梵天:三秒だけ意識を飛ばし、壁や天井の向こうを見ることができる。
- 梵地:どんな外国語でも瞬時に理解することができる。
- 梵人:三秒先の未来が見える。
彼らは三人が持つそれぞれの能力をあわせて「三秒」と総称することにし、それを泥棒稼業に利用していました。
梵地の能力だけ、一見「三秒」と関係ないように見えますが、そのあたりも物語中で詳しく触れられていますよ。
その後、紆余曲折を経て彼らは砂漠でのスリルあふれる大冒険に駆り出されるようになります。
異国の地で彼ら三名は「三秒」を駆使して数々の危機を切り抜けていくのです。
個性的な能力自体も魅力的ですが、それを使っていくうちに三つ子同士の絆・信頼がどんどん深まっていく感じがめちゃくちゃいいんですよ。
他のキャラもいい!
本作に登場するキャラクターは数としてはそれほど多くありません。
しかし、各キャラともにインパクトが非常に大きく、万城目さんの「キャラクターの魅力を引き出すうまさ」を感じましたね。
まず、青い毛皮のロングコートを着込みライオンを連れている女性。
青い毛皮はラピスラズリの糸からできているということで、なんとも異国情緒抜群です。
この謎の女性が、突然梵天・梵地・梵人の前に現れ、彼らの弱みを握ったうえでスリルあふれる砂漠の世界へ導いていきます。
彼女の敵か味方かわからない感じがミステリアスでとても良かったですね。
その他、良かったキャラは下記の二人。
三つ子が異国の地で出会い、砂漠の冒険に同行する女性自衛隊員・銀亀三尉と、軍人・キンメリッジです。
この二人は準主役といっていいほどの活躍を見せます。
銀亀もキンメリッジも最初は絶妙に「ウザい」のですが、物語を読み進めるほどに彼らがカッコよく見えていきます。
ネタバレになってしまうのでここでは書きませんが、実際に本作を読んで彼らのカッコよさを確かめてほしいです。
本作を読み終えたときには、銀亀三尉やキンメリッジのことが大好きになっていることでしょう。
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古代メソポタミア文明の魅力
梵天・梵地・梵人の三人は、突然現れたラピスラズリのコートの女の指示に従って異国の砂漠に行くことになります。
この砂漠というのが、いわゆる古代メソポタミア文明が栄えた地域。
「チグリス・ユーフラテス川流域に栄えた文明」と教科書に書いてあった(気がする)あれです。
本作ではメソポタミア文明に関するウンチクがたくさん語られるのですが、これがめちゃくちゃおもしろいんですよ。
私はメソポタミア文明のことをほとんど知りませんでしたが、それでもまったく問題なく楽しめます。
メソポタミア文明マニアの梵地が物語のいたるところでウンチクを披露してくれるんですよ。
私、「シュメール人」とか「ジッグラト」とか、太古のワードを聞くとワクワクしてしまうんですよね。
「太古の神話」「古代遺跡」などの要素にロマンを感じる人なら楽しめること間違いなしです。
もちろん、ピンポイントでメソポタミア文明が好きな人には問答無用でおすすめです。
奇想天外でスピーディな物語
本作の特徴として挙げられるのが、「何が起こっているのはわからないけれど、ものすごいスピード感で進行していく物語展開」です。
特に序盤は突拍子もないことが矢継ぎ早に起こり、主人公の三つ子も何が起きているのかわかっていない状況が続きます。
当然のことながら、読者も何が起きているのかわからず、まさに1ページ先の展開すら予測できない感じです。
この「意味のわからなさ」「奇想天外さ」を受け入れられるかどうかが、本作を楽しめるかどうかを分けるカギ。
最初は脳が物語を追うのに精いっぱいですが、慣れてくるとサクサクと読み進められるようになりますよ。
万城目ワールド全開
上に書いた予測不能な突拍子もない物語展開こそが、万城目作品の最大の特徴です。
万城目さんは作品のなかで「壮大なホラ」を吹き、読者を翻弄しつつも楽しませるという作風がウリ。
「万城目ワールド」と言われる独特の世界観です。
特にデビュー作『鴨川ホルモー』でこの作風は顕著でした。
本作『ヒトコブラクダ層ぜっと』でも、この「壮大なホラ」感は健在。
それもただの大ボラではなく、思わず読者に「本当にそうだったんじゃないか」と信じ込ませてしまう「リアリティ」「もっともらしさ」があるんです。
このあたり、万城目さんの想像力のものすごさを実感させられますね。
本作では「これぞエンタメ!」と唸ってしまうような万城目さん独特の突き抜けた大ボラを楽しめますよ。
風景描写がすごい
本作を読んでいて「すごいな」と思ったのが風景描写。
作品中では、砂漠や古代メソポタミア文明の遺跡など、明らかに私の日常生活とはかけ離れた世界が描かれています。
それにもかかわらず、風景や建造物が眼前に浮かぶほどクリアな映像感があります。
読了後は遠い異国を旅行してきたような浮遊感・満足感がありました。
日本ではない舞台を描く作品だからこそ、読む人の想像力を刺激する風景描写の巧みさが映えている一作です。
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終わりに
『ヒトコブラクダ層ぜっと』は、特殊能力を持つ三つ子が謎の女性に翻弄されつつ異国の砂漠で高難度のミッションをこなす冒険譚。
万城目さん独特の「1ページ先の展開が予測できない奇想天外な展開」が魅力の一作でした。
古代メソポタミア文明に興味のある人には特におすすめの作品です。
本記事を読んで、万城目学さんの『ヒトコブラクダ層ぜっと』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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