こんにちは、つみれです。
このたび、宮園ありあさんの『ヴェルサイユ宮の聖殺人』を読みました。
フランス革命前のヴェルサイユで起きた殺人事件の謎を描くミステリー小説です。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:ヴェルサイユ宮の聖殺人
著者:宮園ありあ
出版:早川書房(2021/1/21)
頁数:368ページ
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目次
18世紀フランスが舞台の絢爛なミステリー!
18世紀フランスの歴史ミステリーというのがおもしろそうだったので読みました。
私が読んだ動機
こんな人におすすめ
- 歴史ミステリーが好き
- フランスが好き
- 外国を舞台にした和製ミステリーが読みたい
- バディ(相棒)もののミステリーが読みたい
あらすじ・作品説明
18世紀フランス、ヴェルサイユ宮殿のアパルトマンでパリ・オペラの演出家トマ・ブリュネルが死亡しているのが発見される。
ブリュネルの手には聖書の切れ端が握られ、現場には血の伝言が残されていた。
パンティエーヴル公妃マリー=アメリーとフランス陸軍大尉ジャン=ジャックは捜査を開始する。
18世紀末フランスが舞台の和製ミステリー
本作『ヴェルサイユ宮の聖殺人』は、18世紀末フランス革命前のヴェルサイユで起きた殺人事件を描いたミステリーです。
普段は主に日本が舞台のミステリーを読んでいる私としては、国も時代も違う本作はかなり新鮮でした。
和製のミステリーでこの舞台設定はかなりめずらしいですよね。
カタカナが多い
本作は18世紀のフランスを舞台にしているだけあり、人名や地名などの固有名詞が全てカタカナです。
巻頭に登場人物紹介が掲載されているのですが、これが見事にカタカナだらけ。
これはかなり圧倒されましたね。
カタカナ語に慣れない私は「これは苦戦するかも」と思いながら読み始めました。
ところが読み進めてみると、キャラクターが一気に登場せず、物語の進行にあわせて徐々に登場するので無理なく覚えられます。
また、当時の時代背景や舞台説明をかなり詳しく書いてくれており、世界史が苦手な私でも無理せず新鮮な気持ちで楽しむことができました。
よほどカタカナ語が苦手でなければ、読み進めるのに支障はないはずです。
異色のバディ
『ヴェルサイユ宮の聖殺人』の主人公は、フランス陸軍大尉のジャン=ジャックとフランス国王ルイ16世の従妹マリー=アメリー。
軍人と王族のコンビです。
ミステリーにおける数ある異色のバディ(相棒)もののなかでも、これほどの強烈なものはなかなかなく、変わり種と言えるでしょう。
この点だけを見ても、一般的な刑事バディものや探偵・助手のコンビものとは一線を画した作品になっています。
決して事件捜査のプロフェッショナルとは言えない軍人ジャン=ジャックと王族マリー=アメリーが自分の持ち味を最大限に生かして謎を解いていくのです。
これはなかなか興味を惹かれませんか?
最初二人は険悪
本作は、パリ・オペラの演出家トマ・ブリュネルがマリー=アメリーのアパルトマンで刺殺体として見つかるところから始まります。
しかも死体の手には聖書の切れ端が握られ、近くに血の伝言が残されていました。
これはワクワク感マックスすぎますね!
そして、ブリュネルの死亡現場で気を失っていたのが陸軍大尉ジャン=ジャック。
ブリュネル殺害の容疑者でもあるジャン=ジャックの身柄を公妃マリー=アメリーが預かり、タッグを組んで事件の捜査を進めていくという流れです。
最初、気位の高いマリー=アメリーと粗野なジャン=ジャックは犬猿の仲といってもいい状態で、ムードも険悪。
この二人がコンビを組んで捜査を進めていくうちに、少しずつ歩み寄っていく様子がなんとも微笑ましいです。
彼らのやりとりを楽しむのも本作の醍醐味と言えるでしょう。
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プロローグの謎
本作冒頭のプロローグがいかにも謎めいていていいんですよ。
10ページにも満たない箇所なのですが、2つのエピソードが取り上げられていて、その内容がものすごく意味深です。
ジャン=ジャックのエピソード
一つはアメリカ独立戦争の一幕で、本作の主役の一人ジャン=ジャックがアメリカ揚陸作戦の参加中に起きた事件。
突然敵艦からの砲撃を受け阿鼻叫喚の艦内で、瀕死の同僚から内通者の存在をほのめかす一言が漏れます。
本作で扱われている事件が単なる殺人事件ではないことを匂わせているシーンですね。
マリー=アメリーのエピソード
もう一つはマリー=アントワネット王妃の養い子で少年聖歌隊員のアンリが失踪する事件です。
本作のもう一人の主役マリー=アメリーは父が所有しているランブイエの森でアンリの変死体を発見。
パリ・オペラの演出家の死亡事件とアンリの失踪・死亡がどのように関わるのか、事件の根深さを感じさせるシーンですね。
本編との関わりが気になる
プロローグで語られる二つのエピソードはどちらも本編でメインで扱われるトマ・ブリュネル殺害事件と一見無関係のように見えます。
ミステリーとしてはこのプロローグと本編がなんらかの形で関係していることは想像できます。
この謎のプロローグの存在がどのように本編と絡むのかということが強烈な興味となって、ついついページを繰っていってしまいます。
高貴な雰囲気が魅力
上にも書きましたが、本作はフランス王家に連なるマリー=アメリーという人物のアパルトマンで事件が起こります。
このマリー=アメリーが主体となって物語が進行していくため、登場人物に上流階級の人間が多かったり、舞台がヴェルサイユ宮殿だったりします。
このことから本作には高貴で絢爛な雰囲気が漂っています。
和製のミステリーとしては珍しいきらびやかな世界で繰り広げられる推理劇をぜひ味わってほしいですね。
矢継ぎ早に謎が生まれる
本作のミステリーとしての魅力の一つに、「矢継ぎ早に謎が生まれる」ことが挙げられます。
そろそろ謎が解決するかな~と思う箇所に差し掛かると、新たな謎が浮上したり新たな事件が起きたりするのです。
そんな展開が何度も繰り返され、物語が二転三転していくのがなんともおもしろいんですよね。
トマ・ブリュネルの死について調べていたはずのジャン=ジャックとマリー= アメリーが、いつの間にか大きな事件に巻き込まれていきます。
そのなかで次第にプロローグで語られる二つのエピソードとの関係も明らかになります。
このようにミステリーとして先が気になるつくりになっていて、私はグイグイと読み進めてしまいました。
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終わりに
『ヴェルサイユ宮の聖殺人』は「18世紀フランスが舞台の和製ミステリー」、「王族に連なる高貴な女性と軍人男性のバディもの」と珍しい属性がてんこ盛りのミステリーです。
一見すると異色さが際立っていてイロモノっぽさがありますが、謎が謎を呼ぶような息をもつかせぬ展開が魅力の一冊でした。
本記事を読んで、宮園ありあさんのミステリー小説『ヴェルサイユ宮の聖殺人』が気になりましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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