こんにちは。つみれです。
例年、どうしても年度末はバタバタしてしまって読書量も減ってしまうのですが、今年はそこそこ読書時間を確保することができました。
そこで、2018年3月に読んだ本をまとめてみたいと思います!
私は読書コミュニティサイト「読書メーター」を利用しておりまして、このサイトでは本の読了後に255文字以内の感想を書き込むことができます。
私もつたない感想を書かせてもらっていますが、255文字以内という縛りのなかで、いかに自分の言いたいことを伝えられるかということを考えるのは難しいながらもおもしろく、いい頭の体操になっています。
その感想を当ブログにも再掲する形で前月の読書を振り返ってみたいと思います。
では、さっそくまいりましょう。
ちなみに、2018年3月のマイベスト本は、米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』でした。
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目次
2018年3月 読書まとめ
キャプテンサンダーボルト(文春文庫)/阿部 和重、伊坂 幸太郎
上巻(334ページ、2018/02/28読了)
伊坂幸太郎と阿部和重の共作とのことだが、阿部さんの著作を読んだことがない私にとってはどこが阿部属性なのかわからず、終始伊坂作品を読んでいるような感覚であった。
緊迫した状況でこそおちゃらけてしまう登場人物や、何気ない記述だがいかにものちの展開の伏線になっていそうな箇所、物ごとの本質を鋭く突いた格言級の名文句など、どこを切ってもまさに伊坂テイストといった味わいである。
バイオレンスな悪役に繰り返し翻弄される展開もおなじみのものだが、序盤から謎が謎を呼ぶ魅力的な展開はやはり読む側を飽きさせない力強さがある。
下巻(304ページ、2018/03/04読了)
さすがに少年時代に戻りたいとは思わないが、30代も半ばを過ぎると、その頃の記憶というのは輝かしく美化されるようだ。
本作に登場する「相葉」も「井ノ原」も大人として年相応の悩みを持って生きている。
ところが、幼馴染み同士の彼らが久しぶりに再会すると、たちまち少年時代の記憶がよみがえり、お互いを奮起させる。
幼いころの記憶の正しい使い途はこれなんじゃないかというくらい懐かしくて清々しい気持ちにさせてくれる物語であった。
スピード感あふれる無駄のない話運びは実に映画的で、エンタメはかくあるべし!という貫禄を感じさせる。
儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)/米澤 穂信
マイベスト(329ページ、2018/03/05読了)
上品ながらもどこか仄暗さを感じさせる5編を収録。
「バベルの会」という読書サークルの存在がかすかに各話の繋がりを思わせる。
いずれも、上流階級の狭い世界で生物濃縮されたようなノーブルな異常性が漏れ出しており、雰囲気が実に妖しげで良い。
人間の性質として、理解できないものに対して恐怖を抱きがちだが、特に高貴な家柄に対する一般庶民の理解の及ばなさに着眼しそれを暗く描き出したのが本作であろう。
全体的に言葉遣いが美しく、それが不気味さの演出に一役買っている。
各編見事な完成度だが、「玉野五十鈴の誉れ」が傑出している。
玩具修理者 (角川ホラー文庫)/小林 泰三
(221ページ、2018/03/08読了)
2編収録。
「玩具修理者」は50ページに満たない短編であるものの、なかなか強烈な読後感を与える一編。
「玩具」の牧歌的な響き、「修理」の安心感のイメージをとことん裏切ってくる。
「酔歩する男」はいわゆるタイムリープを扱った作品。
理論がかなり緻密に設定されていて、これを理解するだけでも楽しい。意識することで事象が実在化する「シュレディンガーの猫」というやり方で時間の実在を解釈しようという発想は驚異的だ。
両編とも、会話文がウィットに富みながらもクレイジーで、常識の基盤を明るく突き崩してくるイカれっぷりがおもしろい。
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残像に口紅を (中公文庫)/筒井 康隆
(337ページ、2018/03/13読了)
「あ」が消えたら、その後、この小説には「あ」の文字は登場しない。音が少しずつ消えていく。
こんな狂ったテーマをよく思いつくものだ。仮に思いついても実際には書かない。終盤で行き詰まることが目に見えているからだ。
しかし、天才は書いてしまった。
それでも、それだけの小説だったら、ここまでの魅力はなかったはずだ。
さらにこの小説では、消えた音を名前に持つものは存在自体が消える。「い」が消えれば、犬も存在しなくなる。
この発明的な発想によって、物語はときにもの悲しさ、ときに滑稽な味わいをもって読者を楽しませてくれるのだ。
螢 (幻冬舎文庫)/麻耶 雄嵩
(438ページ、2018/03/17読了)
京都の山間部に建っているレンガ造りの黒い洋館「ファイアフライ館」を舞台にしたクローズドサークルもの。
館に通じる道にかかっている橋を車で通過するくだりで、この橋はあとで落ちると直感した私はもはやこの世界にどっぷり浸かっているといってよい。
メインとなるトリックが二つ仕掛けられており、そのうち一つはある程度ミステリーに触れてきた人なら看破できる程度のものだが、もう一つがすごい。
これがミステリーの手法としては革新的で、なるほどこういう仕掛け方もあるのかと大いに驚かせてもらった。
違和感の配分、さじ加減が絶妙。
月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)/有栖川 有栖
(361ページ、2018/03/20読了)
噴火によって山中のキャンプ場に閉じ込められるクローズドサークルもの。
トリックに関して言えば、神業とか離れ業といったインパクトのあるタイプのものではなく、細かい仕掛けを複合的に絡ませて謎を形成するタイプで、極めてパズル的要素の強い作品。
このタイプは「読者への挑戦」との相性も抜群だ。
本作も基本的に手堅いつくりになっていて、謎を一つずつ解きほぐしていくと解答にたどり着けるようになっている。まあ、私はたどり着けなかったが…。
物語としては軽めで読みやすく、それほど意気込まずに楽しめる気軽さがよい。
眼球堂の殺人 ~The Book~(講談社文庫)/周木 律
(576ページ、2018/03/24読了)
トリックから逆算したかのような見取図がすばらしい出来で、理系ミステリーの面目躍如たるものがある。建物の外見や構造は奇抜すぎて正直好みではないけれども。
理系的な内容はよくわからないので斜め読みでやり過ごしたが、肝心のトリックに関わる部分については私のような門外漢にもわかりやすく説明してくれていて非常によい。
各界の天才を集めたという設定を演出するためもあってか電波系の登場人物が多く、また感情移入しきれないうちに彼らが死んでいくので、全体を通して金属質で味気ない印象を受けるが、これは好みの問題であろうか。
新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)/西村 京太郎
(488ページ、2018/03/26読了)
「この推理小説のメイントリックは、双生児であることを利用したものです」という断り書きが冒頭部に挑発的に配置してあり、この先制攻撃が読者を惑わせる。あくまで褒めるつもりでいうのだが、なんとも小癪な趣向である。
都内で犯罪行為を繰り返す双子の物語と、雪山の山荘での連続殺人の物語とが交互に語られていて、二つのストーリーのおもしろさもさることながら、その交点がなかなかつかめないところがいい。
さすがに細かい部分では時代を感じさせるが、生存者が減っていくこのタイプのミステリーで終盤をおもしろく描き切っているのは見事。
まとめのまとめ
3月はミステリーの比重が大きかったです。
麻耶雄嵩『螢』、有栖川有栖『月光ゲーム』もおもしろかったですね。
3月の実績は合計8冊。読んだページ数は3054ページでした。
4月もこのペースで読んでいきたいですね!
つみれ
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